EDITION88×高田明美 インタビュー 第1弾

「きまぐれオレンジ★ロード Blu-ray BOX」が10月20日に発売されました。
現在も多くのファンに支持され続けている「きまぐれオレンジ★ロード」という作品について、『キャラクターに対する“かわいい”とは何か』を重点的に、幼少期やタツノコプロ時代のお話を交えて語っていだきました。
 

ー本日はきまぐれオレンジ★ロードの版画の色校正でお時間をいただきました。
今回のBlu-ray BOXのパッケージイラストの制作についてお話しおきかせください。
まず一番気をつけたところはありますか?

高田明美(以下高田):1番気をつけたのは、配置です。表1と表4で、表1にまどか、表4にひかる、ちょっと可哀想ですが背表紙に恭介を配置しました(苦笑)
最初、文字は入れるのかなと思ってレイアウトをとってたんですけど、出来上がったデザインは、BOXには文字は入れず帯に全部データを入れるということでした。バランスよく表1、4、背表紙にキャラクターを振り分けるレイアウトはポーズをあれこれ描いて結構考えました。

ーBOXやCDなど、手にとった時にどう見えるかということを気にした構図になるってことですよね。

高田そうですね。店頭にもし置かれるなら、箱に置くことになるし、あとたぶんお家にも飾られると思うので、そういう時にやっぱり見栄えがするように……表1のまどかはそのあとなにかの特典にするにしても、ちょうどいいように切って使えるレイアウトにしました。恭介は一部重なっているんですけど、重なっているところはトリミングして、まどかだけで成り立つような絵にしたんです。

ー面白いですね、いろんな用途を考えて描いているんですね。

高田:そうです、グラフィック専攻なので(笑)だから文字が入るスペース空けておいたんですけど。

ー文字が入らないということは後から決まったんですか?

高田:そうなんです。

ー仕上がったイラストを見て、イラストを生かした方が良いという判断ですよね。

高田:そうかもしれないですね。

―今回のイラストの見どころを教えてください。

高田:見どころは透け加減です。
透け感を出したいと思って描きましたが、完成して見返すとちょっと透けすぎかなと思って、レイヤー被せたデータを送ったんですけど、赤いビキニが目立った方が良いということで、そのまま行くことになりました。

ー透け感を出すのは難しいですよね。

高田:なので「濡れたTシャツ」で画像検索かけてみました。色々な画像ありましたがフィギュアですごい上手くやっているのがあって、なるほどな~と思って。

ー見てもなかなか描けないですからね、素晴らしいです。このぼやけた感じもリアリティを感じます。

高田:トップスにはちょっと薄いのを重ね着、腰に巻いたパレオは東宝のビデオのパッケージ「ハワイアンサスペンス」(版画3)の絵と同じ柄にしました。当時からとても人気があったので、それを思い出させるような画題にしました。だからファンの人が見たら「あっあれだ」と思ってくれるんじゃないかなと思います。
▼版画3(ハワイアンサスペンス)


ーありがとうございます。すごく素敵な作品ですね。

 

ーオレンジの鮎川まどかについて、大学生くらいの世代でも「まどかが好きだ」と80年代のヒロインが2020年代の今になっても好かれる、可愛いと思われる普遍的なイメージを、どのようなものだとお考えですか?

高田:昔はちょっと辛かったんですけど、三角関係ものですよね。でもやっぱり、今考えるとちょっとミステリアスな異性に惹かれる頃に、女性っていうのがよくわからないなという戸惑いの気持ちを形にしたような“まどか”と妹みたいに慕ってくれる“ひかる”を両方配置したのが絶妙だったんだろうなと思います。
ただね、私の場合はこの勝負は見えてるから、ひかるが不憫で早く引導を渡してやれと思っていました。(笑)引導を渡すと終わっちゃう話なので、そこは難しいんですけど。
ただ読んで楽しむ方としては、やっぱりまどか派が大多数ですけれども、ひかる派もいたりするので、好きな女の子を選べるっていうのは、今は何十人も出てくるけど、まぁその走りみたいな、Wヒロイン的なところもあったのかなって思います。
クリィミーマミの三角関係とは全然別ですよね。マミと優は一緒だから、実際は三角じゃないけど三角関係という感じですよね。
オレンジ★ロードは完全にどっちを選ぶの?というような三角関係だったから、ひかるがちょっと可哀想だなと思って見てました。まどかも遠慮しすぎだろうみたいな…難しいところですよね。

ー作品1つの中でも“かわいい”の種類が色々ありますが、あの時代でもいろんな“かわいい”がありますよね。

高田:クリィミーマミを観ると、もちろんセレクションの回を観ているということもありますが、今でも面白いので、80年代はアニメのシナリオが進化した時期でもあるのかなって思いました。
その時と今はお話の流行が変わっちゃっていて、そこからは質の変化になるので、80年代の話は今観てもたぶん面白いものなんじゃないかなって思います。

ー私は子供の頃、リアルタイムでクリィミーマミを観ていて、あの時代の“かわいい”は、かわいいよりもっとセクシー寄りな感じで『まどか』もそういう印象でした。その頃初めて女性としての自我が生まれて、マミのアイシャドウのメイクとか、お洋服とか、すごいかわいいなと思ったんですよね。

高田:マミのアイシャドウとか唇については、私はタツノコプロ出身なので、『破裏拳ポリマー』の南波テルがアイシャドウをして口紅が色トレスで、フルメイクで出てきていましたし、あと『科学忍者隊ガッチャマン』の白鳥のジュンもちゃんと色トレスで口紅があって、アイシャドウはしてないですけど、女の子の口は色トレスで唇の色をつけるていうのは、もう私の中でデフォルトだったんですよね。

ーぴえろでのお仕事、時系列的にはクリィミーマミの後に、きまぐれオレンジ★ロード、だと思いますがマミの“かわいさ”とまどかの“かわいさ”についてお伺いできますか?

高田:今だともっと多様性みたいなものが言われて、女らしさ、男らしさっていうのは、それだけでは図れないよっていう世の中になっちゃっていますけど、あの頃はそれ以前の世界だったんで、女性とは男性とはというようなものを絵でも追求しやすい時代だったんじゃないのかなと。
だからむしろその後に関わった『パトレイバー』は、ちょっと次の時代を先取りしたジェンダーフリーな世界のジェンダーレスヒロインだったわけで、そういう世界観に触れたのはパトレイバーが最初だったから、『マミ』や『まどか』っていうのは、思いっきり“らしさ”を追求して良かった時代なんじゃないかと。
マミだと(特に鏡のマミ以外は)色気よりも可愛さの追求の方を真剣にやって、その後もずっとずっと「かわいいって何だろう」って今も考え続けています。

ー本格的に絵を描き始めたのはいつ頃ですか?

高田:絵を描き始めたというなら、もう立つ前から描いてて、壁にもお絵かきしていました。両親は壁に紙を貼っていくら描いてもいいようにしてくれたんですけど、さすがにそれが延長して床とか畳にまでも描くと、ちょっと怒られました。

ー高田先生のHPに「物心ついた時から絵を描いていました」とあったと思います。
以前原画展で子供の頃描いたお姫様の絵を展示した事もありました。子供とは思えない観察力と表現に驚いた記憶があります。先生にとって可愛さや美しさへの追求、その原点ってなんでしょうか?

高田:母が娘時代は、宝塚に憧れてたっていうのもあって、私も子どもの頃ピアノを習っていたんですけど、発表会の時にかわいい服を買って着せてくれてたんです。ピアノの方は全然だったんですけど(苦笑)新しい服を発表会毎、1年に1回買ってもらって、それにリボンが付いてたり、パフスリーブだったり、ギャザーがあったりっていうその時の少女服っていうのが、クリィミーマミの服のベースになっています。
その少女服と松田聖子ちゃんとかあのあたりのアイドルのイメージを一緒にした形で、マミの衣装をデザインしていました。

ー子供の時に観ていて、マミちゃんのドレスが本当にかわいいなと思ってました。

高田:うちは毎年家族写真を撮っていました。その時はちょっといい服を着て、三越の写真館に行って撮っていました。帰りは上の階のレストランでお子様ランチを食べてました。

ー素敵な思い出ですね。パフスリーブはあの頃流行ってたんですか?

高田:流行ってましたね。ギャザーもね。

ー今も流行っていますもんね。

高田:今は大人のコピーみたいな子供服が多いですけれど昔は少女服(子供の服)その中でも、おめかし用の服がちゃんとあって、ピンタックがあったり、刺繍があったりだとか結構凝ったものも出てたんですよね。既製服からそのうち母が作るようになって、作ってもらったものもだいぶあります。

ーそういうのが作品にも表れているんですね。

高田:でも本当にピアノは全然でした(笑)

ーお洋服を着たい一心だったんですね(笑)

 

まだまだ高田先生にお話をお伺いしましたが、今回はここまで!
第2弾もお楽しみに。

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撮影場所:CAFE ZENON&ZENON SAKABA