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記事: EDITION88×あきま インタビュー

インタビュー

EDITION88×あきま インタビュー


2023年12月22日(金)~2024年1月8日(月・祝)に、有楽町マルイで開催された「あきま画集『潜性都市』出版記念展」。
漫画家・イラストレーター両面で活躍されるあきま先生に、画集出版や、収録されたイラストについて、記念展会場でお話をお伺いしました。
 

1.絵を描き始めたのはいつ頃ですか?きっかけがあればお聞かせください。

絵は幼稚園くらいの時から好きで描いていましたが、今のスタイルになったのは大学を出て社会人になってからですね。
最初は父や兄の影響を受けて、飛行機とか、ミリタリー関係のイラストをよく描いていました。
中学生くらいの時に、父が地元の方で絵画教室をやっている先生のところに連れて行ってくれて、そこで初めて美術大学への進路を意識しはじめました。

-子供のころから絵がお好きで、絵画教室に行かれてという感じですね。

そこの絵画教室の先生が「やるからには芸大志向で」という方針でした。
生徒も少なくて基本は僕と先生の息子さんだけで、その子とは芸大で同級生になったりもしました。

-どのような絵を描かれていましたか?

中学・高校までは飛行機の絵をよく描いていました。高校の途中くらいからは、現代美術が好きになって自分の表現をしようという意識が生まれました。当時は村上隆や会田誠、奈良美智がスターになっていった時期で、強く影響を受けました。
芸大在学中も日本画専攻ではありましたが、現代アートを意識したような絵を描いていました。

2.東京芸術大学では日本画を専攻されていたかと思いますが、当時のお話をお聞かせください。

・その当時はどのくらい絵を描いていましたか?

一生懸命絵は描いていましたが、量を描く絵はむしろ大学を卒業した後の方が多いと思います。

-現在の作風との違いはありますか?

出力の仕方が違いましたね。コラージュを試してみるとか。
その感覚は今でも残っているので、全く違うかといわれるとそうでもなく、見た目は違うけど同じという気がしています。

3.大学時代からゲーム会社勤務を経て現在に至るまでの、アナログからデジタルに移行する経緯をお聞かせください。

ゲーム会社でいつかコンセプトアートを担当してみたいという思いがあり、その訓練の一環として、よく昼休みにスケッチブックを持って、近くのカフェやファーストフードの店でスケッチを描いていました。
画材に制約があるので、最初はミリペンと筆ペンで白黒のスケッチを描いていましたが、
今度は色の練習もしたくなってきて、さすがに絵具をカフェで並べるわけにもいかないのでタブレットを使って色を付けようかなと思った頃にちょうどipad proが発売されました。
これがお絵描きツールとして画期的で、すごく描きやすいし、色も付けられるようになりました。
「これで線画も描いた方が早いのでは」と思ってから、アナログからデジタルに移行していった感じが自分の中にはありますね。

-先生にとってデジタル作品の魅力はどんなところですか?

見る側としてはアナログもデジタルもどっちも魅力的ですが、作る側としてはやはりデジタルは圧倒的に効率がよく、編集や描き直しが容易である、というのが強みだと思います。
加えて、デジタルだと大胆なことにチャレンジしやすいです。
一般的にデジタル作画は「精密に描ける」という風に思われる方が多いと思いますが、実は荒々しく描くのがアナログよりやりやすく感じます。何回でも描き直しができるので、逆に荒々しいタッチを取り入れやすい事がデジタル作画の魅力ですね。

4.あきま先生の作品の特徴について、こだわりや気を付けていることがありましたらお聞かせください。

-特徴的だなと思うのがダイナミックな構図ですが、そのあたりで気を付けていることや、イメージしているものはありますか?

絵を作る時に、まずレイアウトと、カメラのレンズをとても意識しています。
見る人を絵の中に引き込みたいという意図が強く、そういった事を一番表現できるレンズを使ったり、画角に気を付けたりしています。
例えば広角か、望遠かという事を最初に意識して決めています。

-光の表現もすごく特徴的に感じます。ほの暗さとキラキラした様子が共存している世界観が素敵だと思います。そのあたりはいかがでしょうか?

生理的なものもあると思いますが、古い映画や、古い写真集のフィルムの質感を参考にしています。
粒子の粗い感じを出せたらいいなと思っています。

-ミリタリーモチーフが印象的な作品が多いと思いますが、描く際のこだわりはありますか?

自分のイラストに取り入れるときには特定の機種とか、固有名がわからないように落とし込むというのがこだわりですね。

-オリジナルの形にするために、具体的なものを見てイメージを得て、要素を足したり引いたりという感じでしょうか?

そうですね。ありそうだけどないものです。
兵器は、時代や国ごとにデザインが変わってくるモチーフなので、そういった要素を引いたり足したりして、その世界観に合うように落とし込んでいます。

-水の表現も多いですよね。

水は心象を反映しているようなモチーフというか。自分でもうまく説明できないですが…古い映画とか写真集で、水がとても印象的に使われているのが好きです。
例えばタルコフスキーの映画ですね。
水は温度や音を連想させると思います。
そういうことも含めて、絵に広がりを持たせたいと思っています。
反射の表現もあり、絵の面白さに寄与していると思うので使っています。

-「少女Null」の表紙も美しい水の表現が印象的です。この作品について教えてください。

1巻の表紙ということで、作品全体の顔になる絵と思い、美しいものにしたいなという気持ちがありました。主人公が「義人」という有機物性のロボットである、という設定なので、冷たい水の中にあたたかい血の通った肉体が浮かんでいるような対比のイメージを持たせようと考えました。またキャラクターを横たわらせることで退廃的なイメージが強まり、より生命感が強まるかなと考え構図を決めました。



5.今回の展示作品の中で、ご自身で一番好きな作品はどちらですか?

「ドラッグストア」の絵が結構好きです。色がうまく使えて、情感が結構出たかなというところと、ドラッグストアの絵を描いている人があんまいないというところですかね(笑)
そういうところが気に入っています。


6.キャラクターを描く際のこだわりのポイントを教えてください。

漫画を描くときはキャラクターの内面が、所作や表情に表れるようにしています。
イラストの場合は造形の美しさのようなところに焦点が当たってくるので、漫画とイラストでは違ってきますね。

・目線が鑑賞者とあわない作品が多い、どこか遠くを見ている、といった、キャラクターの視線が個性的に感じます。

漫画のイラストは見る人の目と合うような描き方をしていると思いますが、少し目を外して見てもらいたいなというところがあり、少し目線が合わなかったりとか、画面の外を見ていたり、スマホや本を見ていたりとか、多少意識はしています。

7.画集を作るうえで大変だったことはありますか?

章立てのアイデアや、タイトルもそうですけど、コンセプトを決めるところですね。
その点は結構考えました。

-表紙は最初の段階で決まっていましたか?

漫画の連載が忙しくて結局締切ギリギリになってしまって…大変でしたね。
「潜性都市」というタイトルがあったので、それに合うようにモチーフと構図を選んで描きました。雲の色、空の色が印象的になるよう、少女の存在感がくっきり浮かび上がるように、表紙にふさわしいような絵を描くよう努めました。



作品を拝見しながらたくさんの貴重なお話をお聞かせいただき、先生のこだわりがとても伝わってきました。本日はありがとうございました。

 

2023年12月 有楽町にて

©あきま
©中西鼎・あきま/集英社

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